転職を希望する人が増えている今、「キャリアコンサルタント」という仕事を耳にすることも多くなっていませんか?
「実際にはどのような仕事なの?」
「興味があるけど自分にもできる?」
といった疑問を持っている人もいるはずです。
近年、多様な働き方や職業の選択肢が増える中で、自分らしいキャリアを築くことへの関心が高まっています。こうした流れにともない、キャリアコンサルタントは、キャリアの選択を支援する専門職として、需要が急速に拡大してきました。
企業内での配置や、公的機関での採用も増えており、転職や再就職を目指す幅広い年齢層の女性にニーズがあります。
この記事では、キャリアコンサルタントの仕事内容、必要なスキルや資格、向いている人の特徴などを詳しく解説します。
「これからの自分の働き方」を考えるきっかけとして、ぜひ最後までご覧ください。
キャリアコンサルタントとは?
キャリアコンサルタントは、労働者からのキャリアや働き方などの相談に応じて、的確なアドバイスとサポートを行う専門職です。
キャリアコンサルタントと名乗るには、キャリアコンサルタントの国家資格が必要で、民間資格のキャリアカウンセラーとは異なります。
日本では、2022年4月に「職業能力開発促進法」を改正し、事業主に対して職業能力の開発に関わる場面でキャリアコンサルティングの機会を提供し、キャリアコンサルタントの活用を促しています。

ここからは、キャリアコンサルタントの仕事内容について見ていきましょう。
仕事内容
キャリアコンサルタントの主な仕事は、労働者が将来の働き方やキャリアに不安を感じたときに、その気持ちに寄り添いながら一緒に解決の糸口を探り支援することです。
対話を通じて相談者の自己理解や職業理解を深め、キャリアの方向性を整理し、行動計画を考えるサポートを行います。心のサポートを行う場面も多く、傾聴力や共感力といったコミュニケーションスキルも非常に重要です。
相談対象は学生や求職者だけでなく、現役の社会人も含まれます。例えば、転職や職場での悩み、スキルアップ、定年後の働き方など、さまざまなテーマに対応しています。
最近では、企業内での従業員の相談サポートとして活躍する仕事も増えています。
キャリアコンサルタントで活躍する人の年齢層
キャリアコンサルタントとして活躍している人の年齢層は30〜60代と幅広く、特に40代以降の女性が多い傾向です。2017年では、活躍している人の約7割が40代〜50代、約2割が60代でした。
2013年 | 2017年 | 2022年 | 労働力人口 | |
30代 | 14.5% | 11.3% | 8.3% | 18.3% |
40代 | 32.7% | 29.7% | 23.0% | 24.0% |
50代 | 33.8% | 38.6% | 40.5% | 22.1% |
60代以上 | 17.7% | 19.2% | 27.1% | 22.4% |
2022年には50代が40.5%と最も多く、次いで60代が27.1%、40代が23.0%でした。
活躍している年齢層の約90%が40代〜60代で占めていることから、40、50代からの転職でも長く活躍できる仕事と言えるでしょう。
キャリアコンサルタントは、豊富な人生経験や就業経験があるほど、相談者への理解やアドバイスに対する深みが増し、信頼されやすくなります。

キャリアコンサルタントは子育てが一段落し、新たなキャリアを築きたいと考える女性におすすめしたい職種です
長く続けられる仕事をほかにも知りたい方はこちらの記事もご覧ください


キャリアコンサルタントの働き方


活躍している年齢層から見てもわかるように、キャリアコンサルタントは60歳以降も長く働ける仕事と言えます。しかしながら、40代以降は子育てと介護、自身の体調の変化などによってライフステージが変わりやすい年齢でもあります。
長期的なキャリアプランを立てていても、環境の変化は突然起こるものです。
ここでは、ライフステージが変わっても長く働き続けるために知っておきたい「働き方」について紹介します。
キャリアコンサルタントの働き方にはいくつかあり、
- 正社員やパートタイムなどで企業や公的機関に所属
- フリーランス・個人事業として独立して活動
- 会社経営・団体運営
などの働き方があります。
次のグラフは、キャリアコンサルタントの活躍の場を表しています。


それぞれの働き方で、どのような仕事があるのかを紹介します。
正社員・パートタイム|企業や公的機関ではたらく
- ハローワークの相談員(就職・転職支援)
- 公共職業訓練
- ジョブカフェ(カウンセリング)
- 大学(常勤・非常勤講師)
- 民間企業(人事・労務、社内カウンセラー)
ハローワークでは、職業訓練の前に「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があり、キャリアコンサルタントが就職に向けた支援を行います。ジョブカフェは、若年者を対象とした就労支援施設で、求人相談前にカウンセリングや各種相談に対応しています。
公的機関でキャリアコンサルタントとして働く場合は、若年者から年配者まで幅広い年代が対象です。
大学でキャリアコンサルタントとして働く場合は、就職に悩む学生支援が主体となります。学生たちが自分の強みや興味をみつけ、仕事へと繋げられるよう一緒に考えサポートします。
民間企業で働く場合は、所属する部署によって働き方に違いがあります。担当の部署は、人事部門や社内カウンセラーなどです。
民間企業の最大のメリットは、未経験からでも転職できるチャンスがあることです。営業や人事に関わる仕事をしてきた人であればなおさら、今まで学んだスキルを活かし、キャリアカウンセラーとしてすぐに活躍できる可能性があります。
社内カウンセラーは、社内の育成や教育に特化して働く点が特徴です。最近では、風通しのよい職場環境づくりやコミュニケーション活性化のため、キャリアコンサルタントを配置する傾向が強くなっています。
フリーランス・個人事業主
- セミナー、研修
- 企業の採用支援
- 人事コンサル
- 経営コンサル
- 資格関連業務
フリーランスで働く場合は、企業や団体からの依頼を受けてセミナーや研修、コンサルティングを行うことができます。スケジュール管理なども自分で行うため、働き方に制限はありません。
自分のスキルを活かし柔軟な働き方ができるのは、フリーランスのメリットです。しかし、フリーランスとして働く場合は、営業活動も同時に行う必要があり、SNSなどを積極的に活用してクライアントを見つける必要があります。
収入が800万円以上のフリーランスのキャリアコンサルタントがいる一方で、収入が月数千円といったキャリアコンサルタントがいる、ということも知っておきましょう。
キャリコンサルタントになってすぐは、民間企業や公的機関で経験を積み、その後フリーランスとして転身するパターンが多い傾向です。
キャリアコンサルタントの年収
キャリアコンサルタントの年収は勤務形態や経験により幅があります。
正社員として企業に勤めた場合の年収は300〜800万円程度です。フリーランスや個人事業主では、100〜300万円、会社経営・団体運営では、100万円未満〜2000万円以上と幅広いデータがあります。




キャリアコンサルタントが注目されている理由と将来性
キャリアコンサルタントは、働き方改革によって需要が増加しています。そのほかにも、高齢化社会による影響もあり、今後も需要が高まると予想されます。
ここでは、キャリアコンサルタントが注目されている理由と将来性について解説します。
働き方改革による需要の増加
政府がすすめる働き方改革により、企業では「従業員一人ひとりのキャリア形成支援」の需要が増加してきています。
労働力不足やメンタルヘルス問題、離職率の高さなどが社会問題として浮き彫りとなる中、職場での悩みや将来の不安を抱える人も少なくありません。
副業や在宅ワーク、時短勤務などの多様な働き方が広がるにつれ、個々の価値観やライフスタイルに合ったキャリア設計への関心も高まっています。
このような背景から、キャリア相談のニーズが急増し、企業内にキャリアコンサルタントを配置する動きも広がってきました。
従業員が安心して働き続けるための支援体制として、キャリアを支援する専門家としての役割が、ますます重要になっています。
シニア層のキャリア相談の増加
定年延長や再雇用制度の普及により、60代以降も働き続ける人が増えています。
その一方で、「これからの働き方」や「自分らしいセカンドキャリア」について不安を抱えるシニア層も少なくありません。
定年後にどのような働き方を選ぶべきか、これまでの経験をどう活かせるか、健康や家族とのバランスを踏まえたライフプランをどう描くかといった相談が多く寄せられています。
キャリアコンサルタントは、こうしたシニア層を対象に、人生後半における選択肢を整理し、その人らしいキャリアの再構築を支援します。
経験豊富なシニアが、これまでの知識や経験を活かして定年後も活躍できるよう、転職をサポートするキャリア相談の専門家が求められています。
企業の人材育成
企業にとって社員一人ひとりの力を引き出すことは、成長戦略の要です。キャリアコンサルタントは、個別面談によるキャリアの棚卸しや目標設定支援、キャリア研修の企画・実施、人材育成プログラムの設計などを通じて、社員の能力やモチベーションを引き出すサポートを行います。
若手社員の定着率向上やミドル層・管理職層のリーダーシップ開発など、幅広い層に対して貢献できるのも強みです。
個人の成長が組織全体の力となる今、キャリアコンサルタントは人材育成のパートナーとして、社内外問わず存在感を増していくことが期待されています。



働き方が多様化する今、キャリアコンサルタントは欠かせない存在です。今後ますます需要が高まる可能性があり、注目したい職業です。
キャリアコンサルタントに必要なスキル


キャリアコンサルタントとして活躍するには、専門知識だけでなく信頼関係を築くための多面的なスキルが求められます。
ここでは、実務で重視されるソフトスキルから、特に重要なスキルを3つ紹介します。
傾聴力
キャリア相談では、相談者が抱える不安や価値観を正確に理解することが最も重要です。
傾聴力とは、単に話を聞くだけでなく、相手の感情や意図を汲み取りながら、共感を持って対応する力のことです。厚生労働省のキャリアコンサルタント能力評価基準でも、信頼関係の基礎として傾聴力が評価されています。
傾聴力のスキルを高めることで、相談者が安心して本音を語れる場をつくり、より深いキャリアの問題にアプローチできるようになるでしょう。
共感力
キャリアコンサルタントにとって、共感力は傾聴力と並ぶ、非常に大切なスキルです。
相談者が抱える不安や葛藤、希望に対して「あなたの気持ちはよくわかります」と心から寄り添う姿勢が、信頼関係の構築には不可欠。
共感力があると相談者は「この人になら安心して話せる」と感じ、自分の本音や悩みを素直にうち明けられます。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも、相談者がコンサルタントに求める要素として「共感的な態度」「親身な対応」が非常に高く評価されています。
共感力は、子育てや介護、職場での人間関係など、日常の中で磨かれてきた経験からも身につく力です。
「誰かの役に立ちたい」という気持ちがある方には、自然と備わっていることも多く、キャリアコンサルタントの適正に合う資質と言えるでしょう。
課題設定力
相談者の話をもとに、現状を正しく把握し抱えている課題を見極め、何に取り組むべきかを明確にする力も不可欠です。
本人も気づいていない問題の背景を探り、支援の方向性を設定することが求められます。特に、再就職支援やキャリアチェンジの場面では、目指す方向を具体的に言語化し、段階的な行動目標を提示するスキルが必要です。
この力を発揮することで、相談者の主体的な行動が促され、自己決定がしやすくなります。
キャリアコンサルタントに向いている人
キャリアコンサルタントは相談者のみならず、企業全体にもメリットをもたらす専門職です。ではどのような人が向いているのでしょうか。
相談者に寄り添える人
キャリアコンサルタントには、相談者の立場や気持ちを理解し、寄り添う姿勢が欠かせません。
共感的な態度で話を聞くことで、相談者は安心して本音を語れるようになり、信頼関係が築けます。
とくに、40代〜50代の女性が持つ人生経験は、相談者の悩みに深く共感し、実践的なアドバイスをするための強みとなります。シニア層からの相談件数も増えており、年齢が近い50代のキャリアコンサルタントの需要も増加傾向です。
客観的な視点が持てる人
キャリア相談では、自分の価値観や意見を押し付けるのではなく、相談者が自分自身で最善の選択をできるよう客観的な視点が求められます。そのためには、冷静かつ中立的に状況を分析し、相手の価値観を尊重できる力が重要です。
客観性は、信頼されるキャリアコンサルタントに不可欠な資質と言えます。
課題発見能力がある人
相談者が話す内容の裏側にある、本当の悩みや課題を発見する能力も必要です。
たとえば、「仕事がつらい」という訴えの背後には、人間関係や今後のキャリアの不安など、複合的な要因が隠れていることが多くあります。
表面的な会話だけでなく、本質的な課題に気づき、一緒に整理していける力が相談者からの信頼を得るポイントになります。
キャリアコンサルタントに関するよくある質問
ここでは、キャリアコンサルタントに関するよくある質問にお答えします。
キャリアコンサルタントはなぜ国家資格なのですか?
キャリアコンサルタントは、もともと民間の資格でしたが、2016年に「職業能力開発促進法の改正」があり、国家資格に位置づけられました。
この法改正の背景には、キャリア支援への社会的な期待が高まっていたことがあります。
少子高齢化や多様な働き方が求められている現代において、働く人のキャリア形成を支援する資格を整備し、
安心して相談できる人材を育成するための制度として、国家資格とされたのです。
キャリアコンサルタントの資格はどうやって取りますか?
資格取得には、厚生労働大臣が認定した講習機関で150時間以上の学習を行った上で、国家試験に合格する必要があります。
試験は筆記と実技試験(面談ロールプレイと口頭試問)で構成されており、年に複数回実施されています。夜間や土日に通える講座も多く、働きながら資格取得を目指す社会人にも取りやすいのが特徴です。
キャリアコンサルタントの難易度は?
キャリアコンサルタントの試験の難易度は「中程度」とされており、直近の合格率は60%前後で推移しています。学科試験、実技試験どちらか1科目のみ合格した場合は、次回受験の際に持ち越せます。
基礎からしっかり学習すれば、十分に合格が狙える資格です。
実技試験ではロールプレイや口頭試問が行われます。接客や介護、教育など対人支援の経験がある人にとっては、比較的取り組みやすい内容だと言えるでしょう。
まとめ:キャリアコンサルタントは需要増加!働き方が選べる仕事
キャリアコンサルタントは、働く人のキャリアや人生に寄り添い、不安や悩みに耳を傾けながら、適切なアドバイスをする専門職です。
働き方もライフステージによって選択ができ、正社員やアルバイトとして企業に所属したり、個人で独立したりといった働き方も可能です。
最近では、シニア層からの相談も増えており、30代後半〜50代の幅広い年齢層の女性が活躍しています。
キャリアコンサルタントの資格を取得することで、信頼性も高く、企業や教育機関、公共機関など多様なフィールドでの活躍が可能です。転職や独立など、自身のキャリアの選択肢を広げるうえでも強みとなるでしょう。
「これまでの経験を社会に活かして働きたい」「40代、50代から長く働ける仕事がしたい」と考えている方には、「キャリアコンサルタント」はおすすめの仕事と言えるでしょう。