ラスト1着!と言われるとつい着ない洋服を買ってしまう
行列ができているお店につい並んでしまう
レジの横に置いてあるお菓子をつい購入してしまう
このような経験はありませんか?
行動経済学は、こういった人間の行動パターンに着目し、「人がどのように意思決定するのか」心理学と経済学の視点から分析する学問です。
この記事では、行動経済学が注目されている理由や、身近な例からマーケティングで役立つ具体的な応用例まで紹介します。

行動経済学を学ぶと、マーケティングの知識として役立つだけでなく、自分が商品を選ぶときにも価値判断がしやすくなります。
- 行動経済学の概要
- 行動経済学が身近で使われている例
- 行動経済学をWebマーケティングに応用する具体例
- 行動経済学のおすすめ書籍
行動経済学とは
行動経済学とは、心理学と経済学が一体化した学問で、人間がどのように意思決定するかを分析し、「なぜ人がそのような行動をするのか」を研究しています。
経済学は、人間が行う合理的な判断に基づく学問ですが、実際には人間は、感情や直感に左右されて非合理的な判断を行うことも少なくありません。
行動経済学は、この人間の「非合理」な行動パターンに着目して分析し、商品開発や広告戦略などのマーケティング分野や政策、教育などの分野で応用されています。
行動経済学が注目されている理由


行動経済学は、マーケティング戦略を考えるうえで応用できる知識です。とくに、Webビジネスにおいては役立つ場面が多く、注目されている理由は次のとおりです。
ノーベル経済学賞で学問として評価された
行動経済学は、2002年にダニエル・カーネマンが心理学者として初めてノーベル経済学賞を受賞、2017年にリチャード・セイラーがナッジ理論を提唱し受賞しています。これによって、行動経済学は「トレンド」としてではなく、一つの学問として評価されるようになりました。
Webビジネスとの相性がいい
人の行動パターンを大量のデータで分析するWebビジネスとの相性がいいことも理由です。行動経済学は、「人はどのように動くか」「なぜその行動をとったのか」人の感情や直感を心理学的なアプローチから読みとって理論的に説明します。
行動経済学の研究によるさまざまな理論は、WebサイトのUI/UX設計や、マーケティング戦略、キャッチコピーなどに応用できます。
行動経済学の理論を使った身近な例
行動経済学の理論は、人が無意識にしてしまう非合理な考え方や判断、「心理バイアス」に関係し、行動経済学を学ぶうえでの重要なテーマとなっています。
行動経済学の理論を使った身近な例には次のようなものがあります。
デフォルト効果
デフォルト効果は、人はあらかじめ設定された(デフォルトになっている)選択肢を変更することなく受け入れる傾向がある、という心理バイアスです。
たとえば、複数のプランがあった場合に「これが人気!」「おすすめ!」と書かれていると選びやすい傾向にあります。
メール設定では、あらかじめデフォルトで「メールを受け取る」にチェックが入っていた場合、変更せずにそのまま登録する人が多いことも良い例です。
人がデフォルト設定の変更をしない理由には、
- 単に変更をするのが面倒だと感じる
- 初期設定=推奨されていると考える
- 「間違いたくない」「失敗したくない」といったリスク回避
があります。
アンカリング効果
アンカリング効果とは、最初に見た情報がそのあとの判断や意思決定にまで影響を与えるといった心理バイアスのことです。つまり、最初に見た数字や情報が「基準」となるのです。
たとえば、
レストランの食事メニューでは、最初に一番高いコースを書いておくと、そのほかのメニューが手頃な価格に感じられ、注文されやすくなるといった傾向があります。
ほかにも、価格交渉において、最初に「10万円でどう?」と提示された価格が基準となって交渉が進んでいくことがよくあります。これもアンカリング効果の応用と言えるでしょう。
ナッジ理論
ナッジ理論とは、人の行動を強制することなく、望ましい方向へ導く方法を意味する考え方のことです。英語で「nudge」とは、そっと肘でつっつく・軽く押すといった意味があり、「そっと背中を押す」というアプローチを指します。
たとえば、
スーパーでは、野菜を入り口付近に置いたり、レジの横にお菓子を置いたり、置く場所によって人が自然と手に取る工夫がされています。
Webビジネスでは、サブスクプランの中間プランが選ばれやすいことを応用し、最初から中間プランを「おすすすめプラン」としてデフォルト設定しておくなど。
ナッジ理論をマーケティングに取り入れた例はたくさんあります。
行動経済学 × Webマーケティングの具体例


行動経済学をWebマーケティングに応用した具体例を紹介します。
CTA(行動喚起)の最適化
ナッジ理論を使ったコピーでユーザーの行動を自然に導く工夫ができます。
たとえば、
ボタンに「今すぐ始める」ではなく「無料で始めてみる」と書く、
申し込みフォームには進捗バーを設置して「残り1ステップ」といったゴールを表示する
などの方法があります。
ナッジ理論を使った行動喚起のポイントは、押しつけるのではなく「そっと背中を押す」設計にすることです。
商品価格の見せ方の工夫(アンカリング効果)
商品価格の見せ方の工夫では、アンカリング効果を応用してお得に見せる方法があります。
アンカリング効果を使った商品価格の見せ方の工夫としては、
単に価格を5,000円と書くのではなく、8,000円→5,000円と値引き前の価格を書くことによってお得に見せることができます。
人は最初に見た数字や情報に影響をうけて、お得かどうか、その価値を判断してしまうという傾向があります。
離脱防止(損失回避バイアス)
Webサイトなどで離脱を防ぎ行動を促す方法として、損失回避バイアスを応用することができます。人は「得をする喜びよりも損をする恐怖を嫌う」といった傾向があるからです。
「見逃すと損!今だけ30%オフ!」「今月中に使わないとポイントが失効します!」といった訴求をすることで、損をする・失うことを回避したいと感じ、行動を促しやすくなります。
信頼性を高める(バンドワゴン効果)
人は「ほかの人もやっている」と知ると安心感を得ます。
バンドワゴン効果は、この心理バイアスを応用し、
「累計10万人がこの講座を受講!」、旅行サイトで「この商品を2人が閲覧中」といったポップアップが出るのもこの効果を使っています。
行動経済学のおすすめ書籍
ここでは、行動経済学が学べるおすすめの書籍を紹介します。
まず、「予想どおりに不合理/ダン アリエリー」
人間はなぜ不合理な行動をしてしまうのか?多くの事例をあげながら、人間がする不合理な行動について実験結果を用いて解説しています。行動経済学の火付け役になったとも言われている本です。
もう一つは、「勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門/エヴァン・ファン・デン・ブルック」
この本も、多くの事例をあげながら、認知バイアスに基づく人間の非合理的な行動について紹介しています。行動経済学の基礎を知るのにおすすめの本です。
まとめ
行動経済学は、人間の非合理な行動パターンに着目して、「なぜそのような行動をとるのか」を心理学と経済学の観点から分析している学問です。
行動経済学の理論は、大量のデータを分析するWebビジネスとの相性がよく、さまざまなマーケティング戦略やキャッチコピーに応用されています。
行動経済学を学ぶことで、Webビジネスで重要なマーケティングのスキルが磨かれるだけでなく、自分が何かの意思決定をする際にも役立ちます。
もっと知りたいという人は、書籍でより深く学んでみましょう!